「あっ……」
小山千恵子は驚いて口を開きかけたが、言葉を探している間に、お腹が大きな音を立てた。
グゥー
その音は、森の別荘の静かな夜の中で、電波を通じて、浅野武樹の耳にはっきりと届いた。
男は低く笑い出した。一度や二度ではなく、笑い始めたら止まらないようだった。
小山千恵子は顔を赤らめて、むっとした様子で言った。「お腹が空いたの」
浅野武樹は笑いを抑えようとしたが、それでも声に笑みが漏れていた。
「わかった。僕もお腹が空いてる。10分後に降りておいで」
小山千恵子はぼそっと返事をし、忌々しいインターホンを切った。
でも心の中では、そこまで居心地が悪くはなかった。
小山千恵子はガウンを羽織り、もこもこのスリッパを引きずりながら、ゆっくりと階段を降りた。
しばらく探してようやく明かりのついている場所を見つけ、キッチンにたどり着いた。