第379章 怪我を負って、なぜ言わなかったの

小山千恵子は手術室の入り口に座り、全身の力が抜けたようにベンチに崩れるように座っていた。

あまりにも見慣れた「手術中」のランプが、また一度浅野武樹のために点灯した。

彼女は、これが何度目の手術室での待機なのか、もう覚えていなかった。

小山千恵子は心が痛み、手足がしびれ、胸の中に大きな石が乗っているようだった。

浅野武樹は彼女のために何度も危険を冒し、何度も死の淵をさまよった……

小山千恵子の心が動かないはずがなかった。

たとえ見知らぬ人でも同情心が湧くのに、まして長い間共に歩んできた恋人なのだから。

彼女は知っていた。二人の関係には確かに疑念があり、不信感があり、最後にはどちらも修復できない亀裂となってしまった。

しかし生死の前では、そんな過去の恨みは些細なことに思えた。