第381章 まさに夫婦だ

浅野武樹は一瞬にして気まずさを感じ、強引に場を取り繕った。

「南アメリカに行く必要はない。帝都でも同じようにできる」

小山千恵子は心の中で何とも言えない動揺を感じ、立ち上がって両手を握り合わせてこすった。

「あなたの言いたいことはわかります。でも、このことは...よく考えさせてください。今は車両隊の問題を解決することが先決です」

彼女は突然、病室にいられなくなり、浅野武樹の視線の下で落ち着かなくなった。

「看護師さんを呼んできて、傷を見てもらいます」

病室のドアが静かに閉まり、浅野武樹は小山千恵子が飛び出すように出て行くのを見て、苦笑いしながらため息をついた。

彼はあまりにも唐突すぎたのだ。臆病なウサギを驚かせてしまった。

彼もまた、小山千恵子と再婚できるとは思ってもいなかった。それは望むことすらできないことだった。