小山千恵子は全身の力が抜け、柔らかいベッドの背もたれに寄りかかった。
夢で良かった。
「大丈夫よ」
口を開くと、小山千恵子は自分でも驚いた。
彼女の声はとても嗄れていて、大丈夫そうには聞こえなかった。
ドアの外の男性の声は少し焦っていた。
「悪夢を見たの?怖がらないで、僕はすぐ隣にいるから」
小山千恵子はハッとした。
隣といえば、あの狭い家政婦の部屋ではないか…
彼女の心は柔らかくなり、小さな声で言った。「鍵はかかってないわ」
浅野武樹は大赦を得たかのように、ドアを押し開けた。
小山千恵子は男性が入ってくるのを見て、その姿が夢の中の彼と重なり、ようやく安心し、太鼓のように鼓動していた心臓も次第に落ち着いた。
浅野武樹は多くを語らず、慎重にベッドの端に座り、手を伸ばして小山千恵子の額に触れた。