第412章 彼らはまだ人間なのか

ウィリアムは布地を置き、辺りを見回してから、慎重に言葉を選んで口を開いた。

「この所謂...聴覚障害児童リハビリセンターの背後にある資金の流れには、大きな問題があります。」

小山千恵子は驚かなかった。

浅野遥と浅野武樹が、単なる慈善事業のためにこれほど心血を注ぐはずがない。

慈善事業は、彼らの恥部を隠す布にすぎない。

このような慈善団体を使ってマネーロンダリングをすることは、富豪の世界では珍しくもない。

この手の事は、浅野遥と浅野秀正が南アメリカで長年行ってきたことだ。

小山千恵子は真剣な表情で分析した。「資金の流れに問題があるのは不思議ではありません。多くの名家がこのような方法でマネーロンダリングをしています。これだけでは決定的な証拠にはなりません。」

ウィリアムの表情が曇り、顔色はさらに悪くなり、声も一層低くなった。

彼は数秒間躊躇した後、諦めて携帯を開き、あるファイルを表示させた。

「言葉にできません。自分で見てください。」

小山千恵子は胸が締め付けられる思いで、ウィリアムの携帯を受け取った。画面には調査報告書が表示されていた。

ウィリアムは歯を食いしばり、珍しく冷たい声で言った。

「現在、二次確認調査を進めています。もしこの報告書の内容がすべて真実なら...彼らは人間として失格です!」

小山千恵子は素早く目を通し、心臓の鼓動が速くなっていった。

ウィリアムは普段は軽薄な性格だが、これほど憤りを見せることは稀だった。

彼女は数行を素早く読み、確かにマネーロンダリングのルートに関する証拠と結果を目にした。

小山千恵子は一字一句見逃すまいと注意深く読み進めた。

読み進めるにつれ、心はますます締め付けられていった。

聴覚障害児童...収容...福祉施設...

一つ一つのキーワードが目に入るたび、彼女の心はさらに締め付けられた。

報告書の最後に目を通したとき、頭の中で「ボン」という音がし、全身の血液が逆流するような感覚に襲われた。

小山千恵子は唇を震わせ、必死に抑えた声で言った。「容疑は...聴覚障害児童の密入国と人身売買?」

衝撃の後、怒りが込み上げ、目が赤く腫れるほどだった。

彼女はこの調査結果が単なる噂であることを願った。