白野社長はスポットライトの下に立ち、落ち着いた様子で原稿を読み上げていた。
小山千恵子は目を細めた。数日会わなかっただけなのに、白野社長はますます輝いているように見えた。
浅野武樹は冷ややかに腕を組み、舞台上の白野社長を一瞬も目を離さずに見つめていた。
まるで真剣に聞いているようでいて、どこか上の空のようでもあった。
拍手が起こり、千恵子は大げさな喝采の声に合わせて、桜井美月の席を越えて、得意げな表情の大野さんを見た。
彼女の隣には、シルバースターレーシングチームの小太りの白野葵が座っていて、子供用の椅子に身体を窮屈そうに収め、無邪気な表情をしていた。
千恵子は一瞬心が和らいだが、それでも無理やり視線をそらした。
今日以降、おそらくこの子の幼少期は暗いものになるだろう。