第16章、浮気

このことを考えると、山田進の心はより苦しくなった。

心の中で彼女に対して責めるような気持ちが芽生えた。もし彼女がただお金に執着していたなら、こんなに矛盾に苦しみ、酒で紛らわす必要もなかったのに。

「さっき彼女から電話があって、弟のために借金を頼まれた」山田進は低い声で言った。「望月紀夫の母が亡くなる前に叔父に二百万円の借金があって、去年叔父が返済を求めてきたんだ。望月紀夫はずっと逃げ回っていて、この数日前に叔父に雇われた人に殴られた。週末に彼女が実家に帰ったとき、弟が彼女の前で可哀想な振りをして、お金を借りてくれと頼んだんだと思う」

望月あかりというお人好しな娘は心が優しくて、人に頼まれると断れず、この件を引き受けてしまった。

「いくら借りたいって？」若葉いわおは好奇心を持って尋ねた。どれほど法外な金額なのか、山田坊ちゃまが腕輪の古い話まで持ち出すほどの。

「百万円だ」

若葉いわおは驚いた：「百万円？！もしかして一桁少なく言ってる？！貸したの？！」

彼の妹の山田ゆうの小遣いでもこれ以上あるのに、彼女に服を買うのにも数着分の金額なのに、それを気にするなんて？

まさか貸さなかったとは言わないでほしい。そうだったら望月あかりが可哀想すぎる。

山田進は首を振った：「貸さなかった」

この狂った世界で、もし山田進が彼の上司でなかったら、若葉いわおは彼を水に漬けて目を覚まさせたいくらいだった。

「兄貴よ、彼女がお金を借りたいって言ってるのに貸さないなんて？！この前妹に女の子のおもちゃを百万円分も買ってやったのに！」若葉いわおは実際には彼より年上だが、彼のこんな最低な行為に五体投地して、負けを認めて兄と呼んでいた。

「分からないよ、腕輪の件で別れたくないって言ってたのに、この三年間彼女を生殺しにしてきて、一体どうするつもりなんだ？！いっそ別れた方がいい。もしかしたら他のお嬢様と知り合って、望月あかりみたいな子じゃ物足りなくなったのか」若葉いわおは女の子の化粧や美容は分からないが、望月あかりはこの三年間本当に山田進に心を尽くしてきた。彼の知る限り、これが望月あかりが初めて山田進にお金を頼んだ時だった。

それも借金だ。借金は返すものだ。恋人間のお小遣いじゃない。

この娘は本当に不幸だ、山田進みたいな男に引っかかって。