芸大は国内でも指折りの芸術大学で、芸術を愛する人々が才能のある人材を発掘しに来ることが多く、芸大側もそれを仲介することを喜んでいます。学生が芸術界で名を上げることは、学校の誇りでもあります。
今日、一人の奥様が来られました。この方は芸大の画室棟の支援者です。
学長と油絵学科主任が直接出迎え、油絵学科の学生全員の作品がこの建物に展示されており、3年生の優秀な学生である若葉加奈子が付き添い、奥様に学科の状況を説明しています。
「おばさま、後で一緒にお食事はいかがですか?前回、母が一緒に食事をしたいと言っていたんです。私もずっと楽しみにしていました」若葉加奈子は愛らしく奥様の腕にすがり、言葉には少し取り入るような、しかしより多くの敬意が込められていました。
「ええ、いいわよ。お母様に電話して、一緒に食事に行きましょう」奥様は頷き、提案しました。「今日は山田進も暇そうだから、彼も誘いましょう」
若葉加奈子は山田進の名前を聞いて、顔を赤らめて俯き、小さく「はい」と答えました。
奥様はそれ以上何も言いませんでしたが、若葉加奈子は空気を読むのが上手で、相手の同意を得ると、口実を見つけて先に離れ、自分の母と山田進に連絡に行きました。今日の食事会で、彼女と山田進の関係は長老たちの公認を得たことになります。
昨日山田進が迎えに来て、高価な贈り物をくれたこと、そして彼の優雅な話し方と外見、彼女に対する礼儀正しい紳士的な態度、裕福な家庭の子息にありがちな軽薄な振る舞いが全くないことを思い出すと、若葉加奈子は心の中で思わず恥ずかしくなりました。
母は、紹介された山田家は教養のある家柄で、彼女が満足なら卒業後に山田家と婚約の話を進めると言っていました。
最初は見合いに気が進まなかったのですが、相手が山田進なら、彼女も良いと思っていました。
携帯を取り出して山田進に電話をかけます。「もしもし、山田お兄さん、おばさまが今日私たちと母と一緒に食事をすると…」
若葉加奈子が遠ざかると、山田奥様が言いました。「学長、今回は一つお願いがございます」
学長は頷きました。「どうぞおっしゃってください」
「実は、主人が油絵学科の3年生に才能のある学生がいると聞き、しかし家庭の事情が厳しいと。特に私に会いに来てほしいと頼まれたのです」