第13章・借金

山田進は朝早く山田ゆうに起こされ、彼女を学校まで車で送った。

昨夜、山田ゆうが容赦なく彼と望月あかりの関係を暴露したおかげで、両親に知られてしまい、父親に書斎で厳しく叱られた。

夜、山田進は眠れず、望月あかりに電話をかけたが切られ、WeChatでメッセージを送ろうとしたところ、フランスから帰国して以来、彼女から一度も積極的にメッセージを送ってこなかったことに気づいた。

彼らの最後の会話は、あの日の昼間のままだった。彼女が市場に買い物に行き、帰宅したら食事ができると言っていた。

その夜、おやすみのメッセージは、WeChatではなくSMSで送られた。

帰宅すると半調理の料理があり、望月あかりは冷たい態度で、さらに腕輪で彼を試そうとした。

あの出来事が彼女を怒らせたのだろう。あの日、彼は誕生日プレゼントを贈ろうと思っていたが、テーブルの上の腕輪を見て、祖母が金の腕輪について祖父の話をしていた記憶が蘇り、負の感情が押し寄せ、彼女を誤解してしまった。

山田進は父親に望月あかりとの関係を隠していた理由を話さなかったが、父親の言葉の一つは正しかった。望月あかりが過去に何をしたとしても、本当に彼女と一緒にいたいのなら、はっきりと話し合い、堂々と付き合うべきだと。

彼女は彼と共に何年も苦労を重ねてきた。返すべきものはとっくに返し終えている。

男は自分の女性と細かいことを気にすべきではない。さらに、嘘をつき続ければ、望月あかりに発覚した時の結果は予測できない。

父親に叱られたことで、山田進はかえって気分が良くなり、心の中の見えない影も多くが吹き飛んだ。

十数万円の車を諦め、自分が長年欲しかった車を注文した。望月あかりの好みに合わせ、現代の女性に人気のスタイルで設定した。

二台の車は色以外、すべて同じだった。

山田ゆう用に一台、望月あかり用に一台、どちらにも偏りがない。

この数日のうちに望月あかりと話し合う機会を見つけ、この車が届いたら誕生日プレゼントとして彼女に償おうと思った。

彼女はいつも優しい性格だ。彼が正直に話し合い、きちんと謝罪し、これからは彼女を大切にすれば、今は怒っていても最後には必ず許してくれるはずだ。

山田進は考えれば考えるほど、望月あかりが愛おしく、心の中でその可愛らしさが痒いように感じられた。

この件が終わったら、彼女を旅行に連れて行き、普通のカップルがするようなことを全部しよう。

これまでの年月、彼女が受けた苦労を全て償い、大学4年生を卒業したらプロポーズし、二人で婚約して、さらに2年間二人の時間を過ごしてから、適切な時期に結婚しよう。

これからは、彼が稼いで彼女を養い、必ず彼女を世界的に有名なアーティストに育て上げよう。

車を注文し終えて帰る途中、山田進は山田ゆうが数日前に買った猫の頭のキーホルダーを思い出した。何かの限定品で、山田ゆうが望月あかりにも一つ渡すように言っていたが、棚に置いたまま忘れていた。

山田進は、数日後に車のキーをそれに付けて渡せば、望月あかりは喜ぶだろうと考えた。

車を転回させ、ポルシェで借りている古いアパートへ向かった。

……

病院では、医師が望月紀夫の検査を終え、彼の精神状態は良くなっていたが、顔の青あざはまだしばらく療養が必要だった。

望月あかりは望月紀夫の血の付いた制服を持って帰って洗濯しようとしたが、道中何か変な感じがして、何度も振り返ると誰かに付けられているような気がした。

玄関に着くと、その感覚はさらに強くなった。

望月あかりは鳥肌が立ち、すぐに中に入って鍵を掛けた。

部屋の掃除を済ませ、洗濯を終え、望月紀夫の夕食を作って病院へ向かった。

鍵を掛けようとした時、地面に吸い殻が一本落ちているのに気付いた。さっきまでなかったものだ。彼女が中に入った後に誰かが外で煙草を吸っていたということだ。

望月あかりは怖くなり、急いで吸い殻を階段の方へ蹴り飛ばし、何度も鍵が掛かっているか確認してから安心して歩き出した。しかし、付けられているような感覚は病室に入っても消えず、まるで誰かが望月あかりか望月紀夫に接触する人々を監視しているかのようだった。

翌日も、その感覚は鮮明だった。

望月あかりは帰宅後、ハンマーを手に取り、ドアに寄りかかってのぞき穴から外を見た。外は静かだったが、かすかに足音が近づいてきて、みすぼらしい中年男性がのぞき穴に映った。左額から右頬にかけて傷跡があり、目つきは凶暴で濁っており、防犯ドアを挟んで彼女に向かって煙草を吸っていた。

煙草は昨日と同じ銘柄で、昨日もこの男がここにいたことを示していた。

その男は煙草を吸っても立ち去らず、望月あかりは恐怖を感じ、すぐに鍵を掛け、携帯を持って寝室に隠れた。

警察には通報できない。その男は単に彼女の玄関で煙草を吸っているだけで、軽率に通報すれば事態を悪化させかねない。

彼女の知り合いは限られており、女性には助けを求められず、男性は学科主任と専門科目の指導教官、それに林元紀と山田進しかいなかった。

林元紀に助けを求めることはできず、望月あかりは最後の勇気を振り絞って山田進に電話をかけた。

電話は3回鳴ったが、山田進は出なかった。望月あかりは電話の音と共に冷静さを取り戻した。横浜市からここまでは4時間かかる。遠くの水では近くの火は消せない。無駄だ。

電話は望月紀夫によって切られ、望月あかりは電話を切った。山田進からも折り返しはなかった。

望月あかりは中で暗くなるまで待った。外の男が帰ったかどうかわからず、のぞき穴から見ると外の明かりは消えており、物音もなかった。

望月紀夫は病院で彼女を待っており、すでに何通もWeChatでメッセージを送って催促していた。望月あかりは勇気を出し、慎重にドアを少し開けた。

外の人感センサーライトが点き、地面には多くの潰された吸い殻があったが、人影はなかった。

その男はもう帰ったのだろう、望月あかりは安心した。

望月紀夫の食事を取りに部屋に戻り、リビングの明かりを消して出ようとした時、廊下のセンサーライトも消え、空間は暗闇に包まれた。赤い光が玄関の外で明滅し、その男が壁にもたれかかって、手の煙草を一服吸うと、赤い光はさらに強くなった。

「やっと出てきたな」その男は口を歪めて笑い、黒ずんだ黄ばんだ歯で煙草の吸い口を噛み、息は生臭く不快だった。

望月あかりの手から弁当箱が床に落ちた。

……

横浜市で、猫の頭の限定キーホルダーを、山田進は借りている古いアパートにあると思い出し、まず取りに戻ることにした。

彼はそれを彼女の服の中に意図的に入れておいたのを覚えていた。望月あかりが着替える時に自然と見つけるだろうと思っていたが、彼女はこれほど長い間気付かなかった。

山田進はクローゼットを開け、中でそのキーホルダーを探した。

望月あかりのここにある服は多くなく、薄い一束で、底まで探すとすぐに見つかった。

山田進はキーホルダーを手に取り、ついでにクローゼットの隅、望月あかりの服の下に押し込められた黒い絨毯の袋に気付いた。赤い絨毯の紐で口が閉じられ、上には古典的な鴛鴦の水遊びが刺繍されており、細かい針目で、注意深く見なければ、その一羽の鴛鴦の尾が一度切れていたことに気付かないほどだった。

これは彼の祖母が腕輪を入れていた袋で、鴛鴦も祖母が手づから刺繍したものだった。

山田進の手が震え、不吉な予感が心に押し寄せた。袋を手に取ると、手触りですでにこの袋が空っぽだとわかったが、それでも諦めきれずに開けてみた。

中には一枚の紙だけがあり、そこにはXX質屋、金製品販売領収書と書かれていた。

彼女はそれを売ってしまった。彼の祖父が祖母に贈った愛の証、この世で祖母が彼に残した唯一の形見を。

彼女はそれをただ数万円のために売り払ってしまったのだ。