金曜日、山田進は出勤し、一日中若葉いわおとプロジェクトについて話し合っていた。
彼はそれらの言葉が誰の口から出たのか若葉いわおに尋ねなかった。若葉いわおは喜びに浸り、同僚たちの祝福を受けるのに忙しく、山田進の様子がおかしいことにも気付かなかった。
土曜日、山田進は朝早くから山田ゆうお勧めの「彼女機嫌直しセット」のお菓子を持って、アトリエで望月あかりに会いに行った。
朝の10時、山田進の電話が鳴りっぱなしだったが、彼は出なかった。望月あかりは期末課題に集中していて、全く気にしていなかった。
11時になると、若葉いわおは諦め、今度は木村平助たちが電話やLINEで連絡してきた。
山田進は電話にうんざりし、ようやく若葉いわおの電話に出て、「俺は田舎者と付き合い慣れてるから、貧乏臭さが染みついてて、お前らの席には相応しくないんだ」と一言言って切った。
そして電話を切り、スマホの電源を切った。
この言葉を聞いて、若葉いわおは大きな衝撃を受けた。昨日まで普通だったのに、今日はどうしてこんなに変わってしまったのか?
山田進は何か誤解しているのか?それとも自分の知らない何かが起きたのか?
木村平助は山田進が来ないと聞くと、まともな理由も言わずにすぐに帰ろうとした。
彼が帰ると、木村平助に付いてきた一団も次々と帰っていった。
若葉いわおはもう客人をもてなす気持ちもなくなり、急いで森結衣に何があったのか聞きに行った。森結衣は山田進の態度を聞いて、顔が真っ青になり、慌てて山田家の両親の結婚記念日の日に、若葉加奈子に気に入られようとして望月あかりの悪口を言ったことを打ち明けた。
もしかしたら、その時誰かが聞いていて、その話を望月あかりに伝えて、自分の悪口を告げ口したのではないか?
なるほど、だから彼女がどんなに親しくしようとしても、望月あかりは相手にしてくれなかったのだ。
一方、若葉いわおはもっと辛かった。確かに彼は幼い頃から山田進と一緒に育ったが、家庭環境は山田進に及ばず、今は山田進の会社で働いていて、幼なじみという肩書きがあるからこそ、木村平助たちのような金持ちの息子たちが良い顔をしてくれる。そうでなければ、彼も田舎者の「乞食」に過ぎない。
彼は永遠に忘れられない、木村平助が起業家を笑う時の軽蔑的な態度を。彼はそんな立場に落ちたくなかった。