清泉文庫館。
望月あかりが入ってすぐ、山田進が戻ってきたことがわかった。チャイナドレスは元の箱に収められ、破れた部分は修復されていなかった。
望月あかりは山田進に電話をかけようと思ったが、考え直して諦め、チャイナドレスを持ち去った。
林元紀は彼女を芸大に連れて行った。夏休み中で、多くの学生は帰省していて、キャンパスは静かだった。
二人は芸術棟の3階まで来て、林元紀はある教室のドアをノックした。
中からガタガタと音がして、半ズボン姿の男子学生が寝癖だらけの頭で出てきた。
望月あかりと林元紀を見て、その男子は寝癖を直そうと頭を掻きながら、笑顔で尋ねた。「林先生!今日はどうしてここに?」
「藤原、相変わらず自由奔放だな」林元紀は笑いながら挨拶し、望月あかりと一緒に中に入るよう促した。