第45章 チャイナドレス

翌日は、山田進の母の誕生日だった。

失踪していた山田進は望月あかりに電話をかけ、山田ゆうの件は解決したと伝え、仕事が終わったら迎えに来て一緒に帰って食事をし、母の誕生日を祝うから、きれいに着飾ってほしいと言った。

望月あかりは承諾も拒否もしなかった。たった数日で、まるで何事もなかったかのように彼女の前に現れ、失踪もなく、「気持ち悪い」と言われたこともなかったかのように振る舞っていた。

山田お母さんの誕生日は夜だったが、クラスメートたちは昼までに作業を終え、望月あかりは一人一人にお礼を言って、チャイナドレスを持って帰った。

望月あかりは林元紀に送ってもらい、ショッピングモールに寄った。

夏休みだったため、カップルが多く、モールは綺麗に飾り付けられていた。

カップルが行き交い、最上階の映画館では新作映画のポスターが貼られ、美しくロマンチックなラブストーリーだった。

望月あかりは突然映画を見たくなり、思い切って林元紀に帰ってもらい、一人で映画を見ることにした。

しかし林元紀は時間があると言い、一緒に見ることになった。

彼女がわざわざこの映画館を選んだのは、映画館の外に宝飾店があり、店内は美しく装飾され、巨大なポスターには「真実の愛は貴重」といった広告文句が並んでいたからだ。

美しい女優が純白のドレスを着て、隣のハンサムな俳優が指輪をはめてあげる様子。彼は彼女を見つめ、彼女はカメラを見つめていた。

もう一方では、赤い中国風の広告で、花嫁が端正で優雅に、頭には美しい金の鳳冠をつけていた。

望月あかりは元旦に山田進と映画を見に来たときのことを思い出した。そのとき彼女はここに立って、ショーウィンドウの金の簪を見て不思議に思っていた。

彼女は山田進に言った。「これを簪にするのは損じゃない?結婚式の日に一回使うだけで、本当に買う人がいるの?ブレスレットにした方がいいんじゃない?」

すると山田進は表情を変え、気分が悪いと言って、その映画も見なかった。

望月あかりは気まずそうにその場に立ち尽くし、山田進は彼女を待たずに早足で去っていった。

今思えば、やはり金の腕輪の件だったのだ。

望月あかりは宝飾店に入り、山田進のものとよく似た金の腕輪を買った。この金の腕輪は山田進のものとほとんど値段が変わらなかった。