山田進は一晩中帰ってこなかった。望月あかりは何度も電話をかけたが、山田進は出なかった。
朝の8時、望月あかりは山田進が帰ってこないことを悟り、待つのを諦めた。チャイナドレスの写真を数枚撮って、その場を離れた。
9時にショッピングモールが開店した。このドレスは台無しになってしまったので、山田ゆうに返すために同じものを探さなければならなかった。
横浜市は広い。街中のどこかに、必ず解決策があるはずだった。
しかし、望月あかりは山田ゆうが言う「職人」の技を過小評価していた。既製品店のチャイナドレスは華やかではあったが、似たようなデザインはあっても、山田ゆうが見つけたドレスの気品には及ばなかった。
唯一見つけた職人も、頭を振って手に負えないと言った。シルクの糸が長すぎて、修復は不可能だと。
望月あかりは朝から夜まで探し回って寮に戻った。足は疲れ果て、山田進に電話をかけたが、まだ出なかった。
これは彼が怒っている表れだと、望月あかりは知っていた。以前にも同じようなことがあった。
山田進の感情の閾値は高く、喧嘩をしても、彼は頭を下げて冗談を言って彼女をなだめ、そうすると喧嘩は続かなくなるのが常だった。
この3年間で、山田進が本当に怒ったのは1回だけだった。その時も連絡が取れなくなったが、仕事で忙しいと事前に言っていた。
だから、望月あかりは山田進に、連絡が取れなかった期間どこにいたのか聞かなかった。
ただ静かに彼の怒りが収まるのを待てば、彼は彼女の元に戻ってくるはずだった。
その後、お金を借りた後の連絡が途絶えた期間があった。
しかし今日、通話画面を見つめながら、延々と続く呼び出し音に望月あかりの心は痛んだ。
今日一日中、彼女は考えすぎていた。若葉加奈子と彼が一緒に車に乗り込む光景が何度も目の前に浮かんだ。
若葉加奈子と接触してから、彼への信頼は消えていた。望月あかりは疑念を抑えることができなかった。
彼は誰かの傍らで慰めを求めているのだろうか。別の優しく大らかな女性に、彼の心の怒りを癒してもらっているのだろうか。
怒りが収まったら彼女のところに戻ってきて、優しい言葉を二言三言かけて謝れば、彼女は許すだろう。
あるいは、彼女より良い女性を見つけて、もう二度と彼女の電話に出なくなるかもしれない。