国立大学を出ると、山田進が門の前で彼女を待っていた。二人はデートの約束をしていた。
望月あかりを隠れ家的な高級中華料理店に連れて行った。噂によると、宮廷料理の伝承者で、来店できる客は富豪か権力者に限られているという。
店内は江南庭園の優雅さを基調とし、庭園は精緻に造られ、中国式庭園の清らかさと、木々で区切られたプライバシー性の高い空間が広がっていた。
中庭では江南地方の民謡が流れ、チャイナドレス姿のスタッフがゆったりと落ち着いた動きで料理を運び、民国時代にタイムスリップしたような雰囲気だった。
午後には親しい友人たちと集まり、のんびりとした午後のひとときを楽しみ、おしゃべりをしながらお茶を飲む。
望月あかりは山田進と小石の敷かれた道を歩きながら、かすかに人々の話し声が聞こえてきた。
話題は様々で、多くはビジネスに関することだった。また、あかりには理解できない暗号めいた会話もあったが、それは表立って話せない事柄だと分かっていた。
すれ違う人の中には見覚えのある芸能人もいたが、山田進が「貧相な」望月あかりを連れ、前後から気を配っている様子を見て、皆知らないふりをした。
某エンターテイメント施設が閉鎖された後、多くの「重要な案件」がここで決まったという。
山田進は湖の中心にある東屋を予約し、料理を注文し、まずはお茶を飲むことにした。
茶芸師は若く美しく、所作も優美で、望月あかりはしばし見とれてしまった。
まさに極楽浄土とはこのことで、女性である彼女でさえ心が揺らいだ。
給仕が温かい水とハンドタオルを持ってきた。山田進は口をすすいだ後、手を拭きながら尋ねた。「紀夫の試験はどうだった?志望校は決まったの?」
望月あかりは頭を縦に振った。青い絹のハンドタオルは手に引っかかり、まだ消えていない手の豆にはこんな繊細な絹は贅沢すぎた。
望月あかりは心が落ち着かず、手を雑に拭いてタオルを戻した。
給仕はタオルを下げ、察して東屋の外に立った。