第39章・ミルクキャンディー

山田進はフランスへ一週間の出張に行くことになり、望月あかりは試験と重なって行けなかった。

望月紀夫のことについて山田進は二度と触れず、森結衣もあの日以来電話をかけてこなくなり、望月あかりはようやく平穏な日々を過ごせるようになった。

しかし、一つの問題が去ると、また新たな問題が持ち上がった。三日連続の試験で、毎回若葉加奈子と同じ試験会場になってしまう。

縁とでも言うのか、試験会場は毎回変わるのに、毎回若葉加奈子と彼女のルームメイトたちと同じ会場になる。この確率なら宝くじでも買ってみたらいいかもしれない。

若葉加奈子は友人たちと一緒にいて、望月あかりを見かけると非常に不愉快そうな表情を浮かべた。彼女の友人たちは望月あかりを何度も睨みつけ、若葉加奈子を慰めていた。

望月あかりは気にしなかったが、試験が半分ほど経過したとき、若葉加奈子の方向から小さな泣き声が聞こえてきた。監督の教師が苛立たしげに叱責すると、その声は小さくなった。

試験が終わり、望月あかりが荷物をまとめている最中、後ろから声が聞こえてきた。「ふん!才女ぶって、人の彼氏を奪う横取り女、いつか報いを受けるわよ!」

その後、クズ男と不倫女は似合いのカップルだなどという言葉が次々と飛び交った。

声を聞けば若葉加奈子の友人たちが彼女を罵っているのは明らかだった。若葉加奈子は見せかけだけの制止を試みたが、ほとんど効果はなく、多くの学生たちが急いで帰らず、ひそひそ話をしながら様子を窺っていた。

すぐに試験会場全体に、望月あかりが若葉加奈子のお金持ちの彼氏を奪ったという噂が広まった。

若葉加奈子の友人たちの口から伝わるうちに話はどんどん変化し、最も荒唐無稽なバージョンでは、望月あかりが低血糖で気分が悪くなった際、若葉加奈子が親切にミルクキャンディーをくれたことがきっかけで山田進を知り、そのキャンディーを口実に山田進と知り合おうとし、可哀想な振りをして保護を求め、少しずつ山田進を奪い取ったというものだった。

例えば、前の日に山田進が若葉加奈子の機嫌を取るためにアクセサリーセットをプレゼントしたのに、次の日には若葉加奈子の電話にも出なくなり、突然冷たい態度で別れを告げたという。

おそらく望月あかりが策を弄して、山田進にそうさせたのだろうと。