第23章・導き

バーから救急車を呼び、望月あかりがその娘を病院に送り届けた。

病院は明るく照らされ、救急室でその娘は暴れて協力的ではなかったため、医師は仕方なく注射を打ち、ようやく静かになった。

今、彼女はベッドに横たわり、虚ろな目で天井の蛍光灯を見つめていた。

望月あかりは隣のソファに座り、お金持ちの生活は素晴らしいと感心した。VIP病室には独立したトイレがあり、床から天井までの大きな窗からは景色も良く、付き添いベッドも広々としていた。

「ご家族に連絡できますか?明日の朝は仕事があるので、早く出なければならないんです」とあかりは優しく言ったが、その娘は彼女の言葉を全く聞いていなかった。

「電気を消しますね。光を見続けるのは目によくありませんから」

ため息をつき、電気を消すと、あかりは付き添いベッドに横たわった。時間がゆっくりと過ぎていく中、その娘はずっと目を開いたままだった。

「何か言ってくれないの?」

突然、病室に娘の弱々しい声が響いた。震える声は崩壊の寸前だった。

「何を言えばいいの?」あかりは朦朧と聞き返したが、すぐにその娘が誰かに慰めてもらいたがっていることに気付いた。しばらくして「私は不器用で、上手い言葉が見つからないの。人を慰めるのも下手。私の境遇の方があなたよりもっと辛いくらい。あなたはお金があって、怪我をしても、こんな良い病院に入れる。でも私は明日の食事がどこにあるかも分からないのよ」

「あなた、本当に貧乏なの?誰を騙してるの?」その娘は信じられない様子だった。若者が貧乏なのは理解できても、一人暮らしなら自分の分だけ食べればいい。あのバーで働いていれば、月収だってそんなに悪くないはずだ。

彼女も若くて美しい女の子なのだから、彼氏がいればこんなに貧しい暮らしにはならないはず。

望月あかりは話したくなかったが、暗闇の中で吐き出したい思いに駆られ、父親の事故死から目の前の娘の自殺未遂まで話し始めた。

「大学一年の時、父と継母が事故で亡くなったの。父が私の実母から残された唯一の家を、継母の連れ子の弟に譲ってしまって。私は奨学金で勉強して、早くから働いてお金を稼いでいたの」