第60章・救助を求めて

「山田進！恥を知れ！私たちはもう別れたでしょう！我慢できないなら他の人を探しなさいよ！」彼が電話をかけてきて、彼女の声を聞いて自分を慰めているなんて！

「あかり、切らないで！辛いんだ……本当に辛いんだ……お願い……」電話の向こうの声は涙声を帯び、耐えられない苦しみを含んでいた。かすれた声で「助けて欲しい、いいかな……お願い……あかり、助けて、辛いんだ……」

「死にそうだ……」

向こう側の呼吸音が大きくなっていき、望月あかりは目を閉じると山田進がどんな状態なのか想像できた。

以前二人でいた時も、彼はこうやって弱みを見せ、彼女の心を何度も揺さぶり、彼にもう少し時間を与え、自分の苦しい胸の内を打ち明けさせた。

彼女が優しく許してくれることを、彼はよく分かっていた。

今は別れているのだから、若葉加奈子でも他の女の子でも好きな相手を探せばいい。木村平助なら、彼のために若くて可愛い女の子をいくらでも紹介できるはずだ。

なのに、わざわざ彼女を苦しめにくる。

「辛いなら若葉加奈子に行きなさいよ！それか木村平助のところに行けば！」

望月あかりはイライラしながら電話を切り、山田進からの着信を防ぐため、この番号をブロックしてから電源を切った。

「あなたと山田進、本当に別れたの？」葉月しずくは本を読みながら、ずっとあかりの様子に注意を払っていた。あかりが電源を切ったのを確認してから尋ねた。「あなた、何を諦めたか分かってる？このチャンスを逃したら二度とないわよ。彼が本当に手放したら、もう楽しみも何もなくなるわ」

「うん、本当に別れたの」望月あかりは隠さなかった。

「私はきっと生まれつき貧乏な運命なのよ、あの屈辱には耐えられない」望月あかりは沈んだ声で答えた。「それと、香水を交換してくれてありがとう」

山田進に返した香水は、以前葉月しずくの新品のものだった。彼女は葉月しずくと交換し、使用済みの方を葉月しずくに渡した。

「ふん……誰がそんなこと気にするものよ。でも警告しておくわ。山田進はそんな大きな金鉱なのよ。今拒否したら、後で後悔しないでよね」山田進と望月あかりの複雑な関係を知ってから、葉月しずくはいつも金のことを持ち出すようになった。

望月あかりは首を振り、布団を頭までかぶった。葉月しずくには見えなかった。