横浜市には夜がない。昼間は太陽の光、夜は街灯の光だ。
望月あかりは助手席に座って道を指示し、山田進は言われた通りに運転する。東から西へ、南から北へ、目的地もなく、ただ気の向くままに走っていた。
二人が出会ったコンビニから、彼女がアルバイトをしていたバーまで。
望月あかりは一言も発さず、山田進は不安になり、彼女が何をしたいのか分からなかった。
「あの...あかり、お腹すいてない?何か食べたい?海鮮料理でもどう?」山田進が提案した。この季節は海鮮が一番美味しい時期だ。以前、彼女は海鮮が好きだったが、お金がなくて冷凍エビを少し買って満足するしかなかった。
望月あかりは首を振り、高級デパートを指差した。
二人は車を地下駐車場に停め、エレベーターで2階へ向かった。
2階は紳士服フロアで、世界中の有名ブランドが集まっていた。