望月あかりがドアを開けようとした手が止まり、後ろにいる正式な立場の森結衣が「まずいわ」と思った瞬間、案の定、他の三人の「彼女」たちの表情が悪くなり、新入りの子は明らかにまた泣きそうだった。
手にはブランドバッグを持っており、持っているのも捨てるのも気まずい状態だった。
森結衣は内心喜んでいた。木村平助のあの軽率な口は、家族に甘やかされ過ぎて、何でも言いたい放題。彼が楽しければ、どんな言葉でも平気で口にする。
森結衣はこの世に木村平助が気に入る人などいないと思っていた。誰もが彼の口の中では貶されるばかりだった。
山田進だけは少しましだったが、先日も木村平助の口の中で二日ほど「バカ」と呼ばれていた。
でもそれでよかった。今は彼女の鬱憤を晴らしてくれ、望月あかりにも今の「彼女」という立場が何の意味もないことを知らしめた。正式な婚約がない限り、彼女たちは遊ばれる存在に過ぎない。