彼の服装から、結婚式から急いで来たことが分かった。望月あかりは手を伸ばし、長時間の静座で固くなった腕を動かし、山田進のネクタイを整えた。
この暗色のネクタイには、交差したストライプが入っていた。
そのストライプに沿って、二つのアルファベットが浮かび上がる。
MX、望月あかり。
この瞬間、望月あかりは崩壊した。
ネクタイを強く握りしめ、山田進の肩に伏せて泣き崩れ、この二日間の辛さを全て吐き出した。
「みんなが望月紀夫は人殺しだって言うの!でも彼は人を殺すはずがない!金田警部に会いに行ったけど、証拠は確実だって言われて、紀夫の指導教官にも会いに行って、ずっと玄関で待ったのに、会ってくれなかった……警察署にも行けなくて、警備員が私を監視して、玄関にも近づけさせてくれなくて……」
彼女は紀夫を助けられそうな場所全てを訪ねたが、誰も会ってくれなかった。彼女は右往左往し、助けを求める術もなかった。
ネットやニュースでは、非難の声が溢れかえり、あらゆる可能性が推測され、どれほど汚く卑劣な推測もあったが、紀夫が殺人を犯していない可能性を口にする者は誰もいなかった。
林元紀は彼女との関係を断ち切り、もう画室に来なくていいと告げた。
葉月しずくは父親が横浜市で情報を集めてもらったと言い、現状でもまだ軽い方だと。望月紀夫と望月あかりの情報は漏れておらず、周りの数人しか知らないと。
唯一彼女を諭したのは木村国吉で、甥が叔父を殺すのは人倫に背くことで、この事件は大きな騒ぎになり、上からの指示で誰も紀夫の件について話してはいけないと告げた。
彼らは彼女に帰って連絡を待つように勧めるだけで、もし紀夫が叔父を殺していないのなら、警察は必ず真相を明らかにし、紀夫の潔白を証明すると。
でも、受けた冤罪はなかったことにできない!潔白だって?遅すぎる潔白なんて意味がない!!!
望月あかりは激しく泣いた。彼女が初めてこんなに泣いたのを見て、山田進は心を痛め、彼女を抱きしめて慰めながら、同時に彼女の頑固さを責めた。