第78章 身分

夜が更けて、控えめなベンツがホテルの玄関に停まると、ドアマンが車のドアを開け、山田進が先に降り、反対側に回って望月あかりのドアを開けた。

山田進は控えめな黒の中山服を着て、若さの浮つきを洗い流し、落ち着きと威厳を漂わせていた。お気に入りの腕時計さえ、極めて普通のものに変えていた。

望月あかりもシンプルなワンピースに着替え、レトロなデザインが彼女を上品で優雅に見せていた。アクセサリーは一切身につけず、メイクも控えめで、かすかな印象を与えるだけだった。

山田進について入ると、このホテルは横浜市の高級ホテルのような派手な豪華さはなく、立地も目立たない場所にあり、望月あかりは横浜市にこんな場所があることを知らなかった。

ホテルの内装は民国時代の豪邸を思わせ、純木材で壁を装飾し、翡翠の階段が敷かれ、レザーのソファーのどこもが洗練された控えめさを醸し出していた。