第79章・紆余曲折

密室の中で、望月あかりは山田進の呼吸から漂う微かな酒の香りを感じ取った。きっと先ほどの商談で少し飲んだのだろう。

山田進はシートのマッサージ機能をオンにし、斜めに寄りかかって目を閉じながら楽しんでいた。「今日のことは秘密にしておいてくれ。誰かをおじさまと呼んだことは、自分だけが知っていればいい。他言は無用だ」

望月あかりは頷いた。中にいた時から、何人かの身分が並々ならぬものだと感じていた。例えば、彼らがよく誰々夫人と呼び、会話の中でも「この方」「あの方」という言い方で本名を出さず、部外者には誰のことか分からないようにしていた。

木村平助の姉の木村清香でさえ、そこでは若輩者扱いだった。つまり、中にいた人物たちは木村家よりも強い背景を持っているということだ。山田進が以前言っていたように、木村平助でさえ彼らには一目置かなければならないのだ。