188、元夫

彫刻の傍にいた二人は質問の声を聞いて、望月あかりとライアンは離れ、振り向くと冷たい表情の山田進が立っていた。

望月あかりは彼を見ても驚かなかったが、眉をひそめて言った。「どうしてここにいるの?」

斉藤玲人は国内で彼女に情報を送り続けていた。山田進は彼女を探すことを諦めず、永陽も彼らの離婚を公表していなかったため、横浜市では皆まだ彼らを夫婦だと思っており、彼女は単に留学しているだけだと思われていた。

望月あかりは山田進のこの思い込みにうんざりしていた。このままでは、彼女は国内で普通の生活を送ることができず、どこに行っても山田夫人と呼ばれてしまう。だから今年、彼女はこのコンテストに参加することを決めた。受け身で隠れているよりも、正面から立ち向かった方がいいと思ったのだ。

案の定、朝のニュースを見て、午後には彼が来ていた。

まるで不倫現場を押さえるかのような態度で、望月あかりが彼の背後で誰かと密会しているかのようだった。

笑えた。彼女はとっくに斉藤玲人と関係を持っていたのに、彼は間違った相手を疑っていた。

「望月さん?この方は...?」ライアンは山田進を知らなかった。中国語は理解できたが、彼らの会話の内容はよく分からなかった。

「私の元夫よ。離婚して7年になるわ」望月あかりは率直に紹介したが、山田進とは話す気はなく、「少し疲れたわ。帰りましょう」と言った。

山田進を見ると、すべての良い気分が台無しになった。

ライアンは理解を示し、望月あかりと山田進の間に立ち、望月あかりと肩を並べて歩き始めた。山田進の前を通り過ぎる時、望月あかりは彼に一瞥もくれなかった。

彼のこの性格は一生治らないだろう。もう手遅れだ。

ライアンも山田進と目を合わせなかった。雄の生き物には生まれつきの直感があり、山田進はライアンが気に入らず、ライアンも山田進が気に入らなかった。それは彼らが同じ獲物、つまり望月あかりを狙っていたからだ。

しかし今の状況では、明らかにライアンが優位に立っていた。そのため、山田進の傍を通り過ぎる時、ライアンは極めて丁寧に別れの挨拶をした。「失礼します」

これは山田進にとって、ライアンが彼に対して示威行為をしているように感じられ、望月あかりが今やライアンを守っているように見えた。

山田進には追いかける勇気がなく、その場に立ち尽くした。