望月あかりは携帯を置くと、運が良かったと思った。彼女に会えたのだから。
森結衣は最初、望月あかりに気付かなかった。結婚式の前日、宮崎朝美から望月あかりが隣人の画室でアルバイトをしていて、隣人の母親に嫌われて解雇されたと聞いていた。
新婚旅行から帰ってきた彼女は、望月あかりの笑い話を聞きたくて仕方がなく、宮崎朝美と食事に行く約束をして、望月あかりの話を聞こうと思っていた。
入り口に着くと、向こうに人影が見えた。一目見て望月あかりによく似ていた。特に、洗いすぎて色あせたTシャツの背中に数カ所の穴が開いているのが、森結衣の記憶では望月あかりしか着ないような服装だった。
近づいてみると、本当に望月あかりだった。
望月あかりは宮崎朝美に会うとは思っていなかった。後者は気まずそうに笑って、受付に向かって話しに行き、森結衣と望月あかりを残した。