山田進は望月あかりを事務室に連れて行き、ドアを閉めると、あかりは皮肉を込めて言った。「どう?私の姿が恥ずかしい?」
「何を言ってるんだ。僕があなたを嫌うはずがない。昔、あなたも僕を嫌わなかっただろう?」山田進は上着を掛け、コップを取り出して彼女に水を注いだ。あかりはバラが好きだったので、彼は特別に何缶も取っておいた。
「お茶とあなたのカップはここに置いてある。暇なら好きに探してみて。ここでは客人として扱わないから」
隣のコーヒーメーカーから香り高いコーヒーが出てきて、山田進はあかりの前にも置いた。あかりはコーヒーの香りは好きだが、飲むのは好きではなかった。
カップは山田進のものと同じセットで、来客用のものではなかった。
このカップセットにはあかりの描いた線画が描かれていた。昔、仲が良かった頃、彼女は何気なく彼との絵をたくさん描いていた。