翌日、山田ゆうは夜明け前に学校へ行かなければならず、山田進は早起きして彼女を送り、望月あかりと望月紀夫の兄妹だけが朝食を食べていた。
望月紀夫は静かに食事をしていた。お手伝いさんが作った海鮮粥は特においしかった。
望月あかりはしばらく考えてから、お手伝いさんに目配せして席を外してもらい、やっと望月紀夫に尋ねた。
「義兄さんから婚約の話は聞いた?」昨日の山田進の話から、望月あかりは望月紀夫が山田進に尋ねたはずだと推測した。
案の定、望月紀夫は頷いた。
望月あかりは詳しい説明はせずに注意を促した。「これから義兄さんに学校まで送ってもらうけど、もう一家の人なんだから、そんなに遠慮することないわ。何かもらったら素直に受け取って、何か困ったことがあったら義兄さんに相談してね」
山田進は望月あかりが心を離していることを気にしており、今は望月紀夫の好意だけが、彼の求める「安心感」を満たすことができた。
「山田ゆうとは少し距離を置きなさい。もう子供じゃないんだから、彼女が噂されるようなことはしないで」山田ゆうは純真で、男女の境界線の感覚が薄かったため、彼女は望月紀夫に二人の違いに注意するよう忠告するしかなかった。
「うん、分かったよ、姉さん」彼は山田ゆうとどう接すればいいか分かっていた。実際、「義兄さん」という一言で望月あかりの態度は分かっていたので、そんなに細かく言う必要はなかった。
でも姉が言いたいなら、聞いておけばいい。
「じゃあ姉さん、林元紀は?」望月紀夫は小声で尋ねた。まるでお手伝いさんに聞かれたくないかのように。
以前、林元紀は姉さんにとても優しかった。姉さんが林元紀の好意に気付いていないはずがない。
今突然山田進と婚約することになって、林元紀の方はどうするんだろう?
「付き合いはもう終わりよ」望月あかりは平然と肉まんを一口かじりながら言った。「先日、画室も辞めたわ。もう行かないの」
望月紀夫は理解した。自分が姉さんの足を引っ張ったせいで、林元紀と姉さんの関係が切れてしまったのだろう。そして山田進が自分を助けてくれたから、姉さんは山田進との昔の恋が再燃したのだ。