ドアの外からノックの音が聞こえ、若葉いわおが書類を持って入ってきた。
「山田社長、今週の火曜日にフランスの方で……」
透明なグラスが飛んできて、若葉いわおは素早く反応してドアを閉めて避けた。オフィスのドアが大きな音を立て、木村平助が中から出てきて、若葉いわおを引っ張って戻りながら、秘書とアシスタントに山田進を当分の間邪魔しないよう指示した。
若葉いわおは訳が分からなかったが、木村平助は理由を話したくなかった。彼が以前山田進に出した悪い提案が裏目に出て、望月あかりが今では強情を張って、山田進と決別する決意を固めてしまったのだ。
彼の推測では、もし山田進が若葉加奈子と学校であんなことをせず、それを望月あかりに見られなければ、望月あかりもここまで心を硬くしなかっただろう。