第89章「感動」

望月あかりはノートパソコンを置いて、階下に山田進の二日酔いのスープを取りに行った。階段を上がると、山田ゆうが部屋で話しているのが聞こえた。彼女が帰ってきていたのだ。

山田ゆうは言った。「お母さん、お父さんとお母さんは本当に良い義理の親だよね。お兄ちゃんがまだ結婚もしてないのに、望月あかり姉さんのためにこんなにしてくれて。みんながあかり姉さんの悪口を言ってるのに、お父さんとお母さんはお兄ちゃんを助けて、あかり姉さんの生い立ちを全然気にしないで。」

「仕方がないでしょう？お兄ちゃんは小さい頃からずっと賢かったから、あかりを好きになるのは間違いないわ。私たち家族も彼の足を引っ張るわけにはいかないわ。」山田おかあさんは仕方なく言った。「ゆうゆう、これからは義姉さんを怒らせないようにね。彼女とあなたは家庭環境が違うから、見識は確かにあなたには及ばないわ。これからは彼女に譲ってあげて、お兄ちゃんを困らせないようにね、わかった？」

「わかったよ...お兄ちゃんにも言われたし、私もお兄ちゃんとお母さんみたいな家庭の人と結婚したいの。そうじゃないと、一生結婚しない...」山田ゆうは甘えて言った。「その時はお兄ちゃんに一生面倒を見てもらうわ。あかり姉さんはそんなに寛容だから、きっと私のことを嫌がったりしないよね...」

「厚かましいわね。あかりはそこがあなたより優れているわ、恥を知ってるのよ。」山田おかあさんは笑って言った。「でも、私もあかりのそこが気に入ったの。彼女はあなたより多くの苦労を経験してきたから、これからはお兄ちゃんを支えてくれると思うと、私も安心よ。」

「お母さん、本当に優しいね。あかり姉さんは本当に幸運...」

「私、羨ましい...」

...

望月あかりは山田進の部屋に戻り、二日酔いのスープをテーブルに置いた。

浴室から洗面の音が聞こえ、山田進はまだ出てきていなかった。

望月あかりはベッドの端に座り、彼が先ほど投げ捨てたネクタイを手に巻きつけた。彼女の心は激しく鼓動し、耳が熱くなった。生まれてこのかた、初めて誰かにこんなふうに褒められた。

幸運なのだろうか？

きっと幸運だ。地方出身の女の子が恋をして、彼氏は彼女に尽くしてくれ、家柄も良く、多くの人が住めないような豪邸に住み、将来の義理の両親も義理の妹も彼女に優しい。