第112章「お金を借りる」

山田進が電話を切り、斉藤玲人からのメッセージも途絶えた。

望月あかりは寝ようとベッドに横たわった時、ドアをノックする音が聞こえた。

ドアを開けると若葉らんと田中かなたが立っていた。二人とも既にシャワーを済ませていたが、何か言いたそうな様子だった。あかりは二人の様子を見て、特にかなたが目を赤くして泣いていた形跡があることに気づき、先に尋ねた。「どうしたの?こんな遅くに何かあった?」

若葉らんはかなたがまだ言い出せないのを見て、急いで言った。「あかり、かなたがあなたに話したいことがあるの。」

そう言って、かなたを軽く押した。かなたはバランスを崩し、あかりの方に一歩踏み出した。

あかりは二人のために道を開け、二人は部屋に入った。

かなたの遠慮がちな態度に比べ、らんはずっと気楽な様子で、主寝室の装飾を見回しながら、あかりのセンスの良さを褒めていたが、それは明らかにお世辞めいた言葉だった。

あかりは二人をバルコニーに案内した。山田進はプライバシーを重視しており、特に書斎とベッドは他人が触れることさえ許さなかった。

小さな書斎には多くのビジネス機密が保管されており、一枚の書類でも株式市場に影響を与える可能性があった。ベッドに関してはなおさらで、普段のシーツ交換でさえ、あかりが取り外して男性ハウスキーパーに渡し、最後はあかりが取り付けなければならなかった。

この二人を入れることさえ例外で、山田進に知られたら叱られるだろう。

主寝室には小さなバーがあり、お酒を飲まないあかりのために、山田進は冷蔵庫を置いて飲み物を保管し、二人でよく「一杯」楽しんでいた。

二人に飲み物を出し、あかりも一緒に座った。

「ここからの眺めは本当に素晴らしいわね。さすが高級マンションは違うわ」らんは飲み物を飲みながら手すりの所に行って夜景に感動していたが、かなたは座ったまま、そんな気分ではなかった。

「ありがとう」かなたはお礼を言った。

らんは夜景を見るふりをして離れた場所に行き、二人に空間を与えたが、かなたは口を開けては閉じ、なかなか言葉が出てこなかった。