第111章・偽装

翌日は土曜日で、葉月しずくは夜明け前に図書館へ向かい、望月あかりは自然に目が覚めるまで寝ていた。

昨日の斉藤玲人からの情報量が多すぎ、その後山田進に起こされたため、望月あかりは夜明け近くまで眠れず、今時計を見ると午後2時を回っていた。

寮は静かで、かすかに田中かなたが洗面所で話している声が聞こえた。

昨夜の田中かなたの様子を思い出すと、きっと彼氏と喧嘩したのだろう。望月あかりは詮索せず、携帯を手に取ってメッセージを確認した。

携帯のトレンドニュースは「地元の林お母さんと女子大生の『対決』」という出来事で、ニュースアプリを開くと、ホットトピックスは全てこの話題だった。誰かが林お母さんの動画を面白おかしく編集して娯楽にしていたが、望月あかりは現場を経験していたので、林お母さんの叫び声や暴れる様子をもう一度見たくはなかった。