ホテルのこちら側で、成田まことは携帯を下ろし、顔を上げると望月あかりが外国人と話をしているのが見えた。彼らは一緒に望月あかりが壁に掛けた絵を鑑賞していた。
望月あかりも不思議に思った。先ほど藤原信から電話があり、フランスのレオグループ傘下のギャラリーの担当者が彼女がオークションに出した絵を見て、彼らの責任者が彼女の画風をとても気に入り、今後の協力について話し合うために人を派遣したとのことだった。
相手がこれほど急いでいるとは思わなかった。まさか大晦日の夜に会うとは。
そして会う場所となったこのホテルは、以前彼女が絵を描いていた場所だった。なんとも劇的な展開だ。
「望月さん、社長がお話したいとのことですが、よろしいでしょうか?」スーツを着た従業員が、ブルートゥースイヤホンを持って望月あかりに尋ねた。