ホテルに入ると、知り合いに出会った。と言っても、あまり親しくない赤川隆だった。
赤川隆は食事の約束があったようで、ちょうど山田進と望月あかりとすれ違った。この数日間、SNSで騒がれていたため、望月あかりが自分が思っていたような金持ちの令嬢ではないことを知っていたので、あまり親しげな態度は取れなかった。
「山田社長、山田夫人」赤川隆が挨拶すると、山田進はただ頷くだけで、目には赤川隆という人物は全く映っていないかのように、あかりの手を引いて歩き出した。
望月あかりも何も言わず、山田進について行った。
前回来た東屋とは違い、今回は中国風の住居で、食卓は中庭に設置され、周りには假山と流水が配され、中国風の建物も飾りではなく、生活に必要なものが全て揃っていた。
まるで古代にタイムスリップしたかのようで、紅木の衣装箪笥には着替えの寝間着や洗面用具まで用意されていた。