市の中心部にある高級タウンハウス。ここに住む人々は裕福か身分の高い人ばかりだった。
望月あかりが住んでいる棟の三階の窓は明かりが付いたままで、山田進は下で待機しながら、パジャマ姿で窓のカーテンを引く望月あかりの影を見た。
その瞬間、山田進の心がようやく落ち着いた。
この7年間、彼女は裕福な暮らしをして、貧しい思いをすることはなかった。彼女は美しくなり、過去の暗い影から抜け出したことを示していた。
山田進は車の中から上階を見つめながら、手には彼女のここ数年の資料があった。彼女は有名な芸術大学の大学院に合格し、修士から博士課程まで進学し、この数年は指導教授と世界中を旅していた。
彼女が見つからなかったのも当然だ。彼女の人生はこんなに充実していたのだから。
書類の中には写真が挟まれていて、すべて彼女のこれまでの生活写真だった。
山田進は写真の中の望月あかりの顔に触れながら、一枚一枚、まるで彼女の成長を追体験するかのように見つめていた。
7年間彼から逃げ続けて、ようやく姿を現してくれた。
しかし、彼は彼女を完全に失ってしまった。
……
望月あかりと斉藤玲人は市場に買い物に行った。斉藤玲人は後ろに誰かが付いてきているのに気づき、装飾品の反射を利用して確認すると、山田進だった。
「どうしたの?誰かいるの?」望月あかりは彼の様子がおかしいことに気づき、尋ねた。「今日の牛タンと海鮮は新鮮よ。何が食べたい?」
斉藤玲人は首を振った。ここで山田進を見かけたということは、望月あかりはすでに山田進と会っているかもしれない。
7年が経ち、山田進はもはかつての愚かな御曹司ではなく、国内では父の事業を引き継ぎ、ビジネス界では右に出る者がいないほどの人物となっていた。かつての木村家や土井家でさえ、今では彼に一目置くようになっていた。
隣にいる望月あかりを見つめながら、斉藤玲人は不安を感じていた。その不安は望月あかりではなく、山田進に起因するものだった。
山田進の勢力拡大は、鈴木明子の父も力をつけていることを意味していた。望月紀夫は鈴木お父さんと組んでいるため、彼は鈴木家に対して表立って対抗することができなかった。
「斉藤玲人?」望月あかりは不思議そうに、さっきまで普通だったのに、今では彼女の話も聞こえていないかのように恍惚としているのを見て疑問に思った。