第178章・帰国

望月あかりの指にはめられた指輪は、清楚な花の形をしており、中央にダイヤモンドが一つ、周りにピンクの小さなダイヤモンドが散りばめられていた。

この指輪は望月あかりが持っている中で一番小さなもので、山田進が彼女にくれたダイヤの指輪は、どれもこれより大きく、より純粋なものだったが、望月あかりはやはりこの指輪が好きだった。

これは彼女の指輪で、今、傍らには彼女を傷つけたことのない婚約者が眠っている。

斉藤玲人はタブレットを持って望月あかりに写真を見せた。その中には山田山彦がボールを追いかけて走り回る姿があった。

「彼は健康そのもので、この数年風邪一つひかなかったし、勉強も真面目で、成績も優秀だよ」と斉藤玲人は言った。

望月あかりは斉藤玲人の胸に寄りかかり、手を伸ばして山田山彦の顔に触れるようにして、何も言わなかった。