望月あかりの指にはめられた指輪は、清楚な花の形をしており、中央にダイヤモンドが一つ、周りにピンクの小さなダイヤモンドが散りばめられていた。
この指輪は望月あかりが持っている中で一番小さなもので、山田進が彼女にくれたダイヤの指輪は、どれもこれより大きく、より純粋なものだったが、望月あかりはやはりこの指輪が好きだった。
これは彼女の指輪で、今、傍らには彼女を傷つけたことのない婚約者が眠っている。
斉藤玲人はタブレットを持って望月あかりに写真を見せた。その中には山田山彦がボールを追いかけて走り回る姿があった。
「彼は健康そのもので、この数年風邪一つひかなかったし、勉強も真面目で、成績も優秀だよ」と斉藤玲人は言った。
望月あかりは斉藤玲人の胸に寄りかかり、手を伸ばして山田山彦の顔に触れるようにして、何も言わなかった。
彼が元気でいることがわかり、安心した。
彼女は普通の家庭の方が好きだった。大切にされ、愛されることを。山田進のような回りくどい裕福な生活ではなく、毎日誰かに挑発されることを心配したり、山田進が誰かと出かけているところを見られることを心配したり、彼女の前で威張り散らすことを心配したりする生活ではなく。
毎日家で温かい食事があれば、望月あかりは十分満足だった。
指輪をはめた指を伸ばして眺めていると、斉藤玲人はクローゼットで着替えていた。今日は記念すべき日だから、望月あかりを食事に連れて行くと言っていた。
彼は目に見えて緊張していて、シャツのボタンを何度も間違えて、今でもそれと格闘している。
望月あかりは可笑しくなって、すぐに立ち上がって彼のボタンを留めてあげた。
「たった一晩で、いつもは冷静沈着な斉藤弁護士が、ボタンも留められなくなるなんて?」
「昨日彼らが私たちの会話を盗み聞きして、賢い妻ができたことを知ったから、わざとあなたに留めてもらおうと待っていたんだよ」と斉藤玲人はにやにやしながら言った。
「お世辞が上手ね」望月あかりは彼の眼鏡をかけさせ、髪も整えてあげた。
たった一つの指輪で、望月あかりの役割は大きく変化した。以前は斉藤玲人が何度も頼まない限り、彼の服装には一切関心を示さなかったのに、今では彼の持ち物が少なすぎると感じるようになっていた。
そこで食事の時間までまだ余裕があるうちに、一緒に買い物に出かけることにした。