望月あかりは一晩中眠れず、リビングに座ったまま動けなかった。木村久仁子がこっそり出て行ってしまうのではないかと恐れ、一晩中目を閉じることさえできなかった。
朝の5時、彼女は起き上がって朝食を作り始めた。
6時半に木村久仁子が起床し、洗濯物を取り込んで着替えた。彼女はまた正義を執行する刑事課長の姿に戻った。
あかりは小籠包をいくつも蒸し上げた。皮は薄く、具はたっぷりで、つけダレは酸味と辛みが絶妙だった。
久仁子は一気に二籠食べ、残りの一籠をあかりが食べ物入れに詰めた。後で望月紀夫に食べさせるつもりだった。
7時10分、二人は一緒に出発した。
警察署には望月あかりは入れなかったが、今回木村久仁子は車で警察署に入り、中庭の駐車場に停めた。あかりに言いつけた。「車の中にいて、どこにも行かないで。後で護送車がここを通るから、弟に会えるわ。小籠包は私が渡しておく」