第41章 末永く添い遂げ、早く子宝に恵まれて

秋山奈緒は軽く鼻を鳴らして、

「安心して、あげるわよ。道端に落ちていても誰も拾わないような安物のネックレス、あなただけが宝物みたいに大切にしているのね」

「秋山奈緒、一度警告しておくわ。私の母は私の底線よ。もう一度母や母の物について悪く言うなら、容赦しないわ」

秋山奈緒は笑い話でも聞いたかのように、思わず笑い声を漏らした。鈴木之恵は彼女の目には自由に扱える軟弱者でしかなかった。

「そう言われても、私があなたを恐れるとでも?」

鈴木之恵が顔を上げると、藤田深志がホールから出てくるのが見えた。秋山奈緒も彼が近づいてくるのに気付き、すぐに満面の笑みを浮かべ、両手で親密に鈴木之恵の腕に絡みついた。

「お姉さん、今年の誕生日の願い事はお姉さんと一緒に誕生日を過ごすことなの。一度だけでいいから叶えてよ!」

藤田深志が長い脚で歩み寄ってきた。

「何をしているんだ、ケーキを切るぞ」

秋山奈緒は片手を空けて藤田深志の腕に絡みつき、両側に一人ずつ抱えて、遠目には親密な家族のように見えた。

「深志さん、お姉さんを説得してください。ケーキも食べずに帰ろうとしているんです」

鈴木之恵が目を上げると、藤田深志は冷たい目で彼女を見つめていた。

「そんなに急いで帰る用事でもあるのか?ケーキを食べるくらい、そんなに難しいことか?」

秋山奈緒は鈴木之恵に向かって策略が成功したという目配せをし、それは脅迫めいたものだった。

鈴木之恵はその視線の意味を理解した。今日このケーキを食べなければ、あのネックレスは手に入らないということだ。

「じゃあ、食べましょう」

鈴木之恵は腕に絡みついた手を振り払い、ホールへ向かって歩き出した。心の中は不快感でいっぱいだった。

秋山奈緒と藤田深志が後ろについてきて、鈴木之恵は後ろからの軽い足音と重い足音、そして親密な会話をはっきりと聞くことができた。

「深志さん、和食が食べたいの。後で和食を食べに連れて行ってくれない?」

「ハイアットで何でも作れるだろう。指示すれば部屋まで持ってきてくれる」

「でも、あなたと二人きりで話したいことがあるの。おとといあなたが言ってたことなんだけど、ここじゃ話しづらいでしょう?」

「わかった。早めに切り上げろ」

「せっかく久しぶりに帰国して誕生日を過ごすのに、急かさないでよ」

……