秋山奈緒は軽く鼻を鳴らして、
「安心して、あげるわよ。道端に落ちていても誰も拾わないような安物のネックレス、あなただけが宝物みたいに大切にしているのね」
「秋山奈緒、一度警告しておくわ。私の母は私の底線よ。もう一度母や母の物について悪く言うなら、容赦しないわ」
秋山奈緒は笑い話でも聞いたかのように、思わず笑い声を漏らした。鈴木之恵は彼女の目には自由に扱える軟弱者でしかなかった。
「そう言われても、私があなたを恐れるとでも?」
鈴木之恵が顔を上げると、藤田深志がホールから出てくるのが見えた。秋山奈緒も彼が近づいてくるのに気付き、すぐに満面の笑みを浮かべ、両手で親密に鈴木之恵の腕に絡みついた。
「お姉さん、今年の誕生日の願い事はお姉さんと一緒に誕生日を過ごすことなの。一度だけでいいから叶えてよ!」