鈴木之恵は唇を舐めて、「私はあなたの携帯を見たくないし、あなたも私の携帯を見ないで」と言った。
藤田深志は軽く頷き、強引に携帯を彼女の手に押し付けた。「見たければ見ればいい。でも、お前の携帯は必ず見せてもらう」
鈴木之恵は呆れて笑った。彼はいつもこんなに理不尽で、時には幼稚園児のように幼稚だった。
藤田深志は彼女の返事を待たずに、彼女のポケットに手を入れて、一体誰からのメッセージを見せたくないのか確かめようとした。
彼の手が彼女の太ももに触れた時、鈴木之恵は急に焦った。
「藤田深志、道理が分かるの?私は見せないって言ったでしょ。これ以上したらお爺さんを呼ぶわよ」
藤田深志の大きな手が既に彼女のポケットに入っていた。鈴木之恵は両手で必死に守り、全身の力を振り絞って携帯を守ろうとした。
今日は絶対に携帯を見せるわけにはいかない、これは原則だった。藤田深志は横暴な振る舞いに慣れていて、人に逆らわれることを最も許せない人だった。
二人は揉み合いになった。
「お爺さんを呼ぶって言ったじゃないか、呼んでみろよ?」
彼は彼女が呼ぶ勇気がないことを見透かしていた。彼女は実家に帰るたびに、ウサギのように大人しくなるのだから。
携帯は半分奪われそうになり、鈴木之恵は両手でもう守りきれない状態だった。それなのに彼はさらに挑発的な口調で彼女を煽った。
「お爺さん、お爺さん...」
鈴木之恵は覚悟を決めて、ドアの方向に向かって何度か叫んだ。声は徐々に大きくなっていった。
ビリッ——
彼女の声が止んだ瞬間、太ももに冷たい風を感じた。
二人とも固まった。
鈴木之恵のズボンの横の縫い目が長く裂け、ポケット部分の布が千切れて、白い太ももが露わになっていた。
藤田深志は千切れた布切れを手に持ち、喉仏を鳴らした。もはや携帯を奪う気も失せ、その魅惑的な光景に目が釘付けになっていた。
「鈴木之恵、俺はお前に対して自制心はあるが、多くはない。そんな風に誘惑するなら、その気になってもいいのか?」
「自惚れないでよ。私は庭の啸天を誘惑してもあなたは誘惑しないわ」
啸天はお爺さんが飼っている犬だ。
藤田深志は目の前で強がる女を横目で見ながら、彼女をベッドに押し付け、身を乗り出した。
「随分と趣味が重いんだな。啸天がメス犬だって知ってるか?」