陸田直木は言葉を整理して、
「今日は僕たち二人が出会った初日だから、僕はまだあなたのことをよく知らないし、あなたも僕のことをよく知らないはずだ」
そこまで話したところで藤田晴香に遮られた。
「大丈夫よ、お互いを知るための時間はたくさんあるわ。私たちの未来はまだまだ長いんだから」
陸田直木は続けた。
「でも、家族が決めた結婚の日取りはもうすぐだ。こんな性急な結婚は、君には耐えられないんじゃないかな?」
彼は藤田晴香のようなお嬢様は妥協できる人ではないと思っていた。彼女は簡単に自分との結婚を承諾するはずがないと。しかし次の瞬間、藤田晴香は即座に答えた。
「耐えられるわ」
陸田直木は一瞬心臓が止まりそうになった。彼は苦笑いを浮かべながら、
「もし君がこの結婚に同意できないなら、遠慮なく言ってくれていいんだ。僕は気にしないから」