鈴木之恵はその夜、八木真菜に錦園まで送られました。数時間の休息で大丈夫になり、自分で帰れたはずですが、八木真菜が心配で送り届けたのです。
帰宅すると藤田深志に会うと思い、どう説明しようかと考えていました。しかし、藤田深志はその夜帰ってきませんでした。
月曜日、会社に着いたばかりの時、柏木正から内線が入りました。
「あ...鈴木之恵さん、社長室までお越しいただけますか?業務の件です。」
鈴木之恵はバッグを置き、パソコンの電源も入れずに直接上階へ向かいました。
藤田深志は革張りの椅子に寄りかかり、ペンを手に持ち、機嫌が悪そうでした。
「社長、何かご用でしょうか?」
柏木正はドアを閉めて出て行きました。
藤田深志は数枚のA4用紙を渡し、目の下のクマが目立ち、徹夜したような様子でした。