藤田深志は午前中ずっと忙しく過ごし、鈴木之恵から送られてきた退職メールを見て腹が立って仕方がなかった。
彼は太陽穴を揉みながら鈴木之恵の内線に電話をかけ、その女を呼びつけて叱りつけようとしたが、何度かけても応答がなかった。
「柏木君、デザイン部から鈴木之恵を呼んでくれ。」
電話が通じないため、人力を使うしかなかった。
柏木秘書は社長の険しい顔を見て、何も聞かずに直接階下へ向かった。何が起きたのかわからないが、これからは首の皮一枚つながった状態で仕事をすることになりそうだと予感した。
デザイン部は静まり返っていた。柏木正が鈴木之恵のデスクに行くと、ティッシュ箱一つないほど整然としていた。パソコンは電源が切られ、椅子はきちんと整えられていた。誰かが使用した形跡すらなかった。