第166章 妊婦は薬を適当に飲んでいいの?

鈴木之恵は一瞬緊張して、

「私一人で行きます。あなたは自分のことをしていてください」

「忙しくないよ」

老人は若い二人が彼の前で遠慮し合っているのを聞いて、つい火に油を注ぐように、

「なぜ頼らないんだ?頼めるものは頼むべきだ!あの長い脚を無駄にするのか?」

鈴木之恵は黙って病室を出た。藤田深志が後に続き、彼女の後ろでのんびりと立ち、彼女の使い走りを喜んでいるような表情を浮かべていた。

鈴木之恵は病室のドアを振り返り、この大物に命令なんてできないと思った。おじいちゃんに聞こえないように、小声で言った。

「私一人で大丈夫です。本当に必要ありません。お仕事に行ってください」

言い終わるや否や、くしゃみを二回立て続けにした。

藤田深志は平然と鼻を鳴らし、

「もういいから、この時間があれば既に受付は終わってる。俺が付いて行かないと、後でおじいちゃんに知られたら、また怒り出すぞ」

彼がエレベーターの方へ先に歩き出し、今度は鈴木之恵が後に続いた。

「私、おじいちゃんに告げ口なんてしていません」

彼女が説明すると、藤田深志はさらりと返した。

「責めてないよ」

鈴木之恵は彼のこの言葉を慎重に吟味した。'責めてない'というのは、つまり彼女が告げ口したと思っているけれど、大人の度量で許してあげているということだ。

彼女は冷笑して、

「本当におじいちゃんには何も言っていません。私たちが離婚しようとしていることを、おじいちゃんがどうやって知ったのかも分かりません」

藤田深志の表情が一瞬止まった。彼は彼女が診察の付き添いを断られたことをおじいちゃんに言わないという意味だと思っていたが、実は病室での出来事について説明していたのだ。彼はそちらの方向には全く考えが及んでいなかった。

「おじいちゃんはそう簡単に騙せる人じゃない。察しがつくのは当然だ」

老人は裸一貫から身を起こし、藤田グループを一手に創設し、ビジネス界でも一時代を築いた人物だ。今は年老いているが、頭は依然としてはっきりしている。彼を騙すのは容易なことではない。

藤田深志はこのことについては心の準備ができていた。

鈴木之恵は彼が気にしていない様子を見て、おじいちゃんがどうやって知ったのかについてはもう深く追及しないことにした。