鈴木之恵は一瞬緊張して、
「私一人で行きます。あなたは自分のことをしていてください」
「忙しくないよ」
老人は若い二人が彼の前で遠慮し合っているのを聞いて、つい火に油を注ぐように、
「なぜ頼らないんだ?頼めるものは頼むべきだ!あの長い脚を無駄にするのか?」
鈴木之恵は黙って病室を出た。藤田深志が後に続き、彼女の後ろでのんびりと立ち、彼女の使い走りを喜んでいるような表情を浮かべていた。
鈴木之恵は病室のドアを振り返り、この大物に命令なんてできないと思った。おじいちゃんに聞こえないように、小声で言った。
「私一人で大丈夫です。本当に必要ありません。お仕事に行ってください」
言い終わるや否や、くしゃみを二回立て続けにした。
藤田深志は平然と鼻を鳴らし、
「もういいから、この時間があれば既に受付は終わってる。俺が付いて行かないと、後でおじいちゃんに知られたら、また怒り出すぞ」