鈴木之恵は自分が借りているアパートに戻り、おじいちゃんにビデオ通話をかけた。しばらく話をして、電話の向こうのおじいちゃんは機嫌が良さそうだった。
鈴木之恵は申し訳なく思い、
「おじいちゃん、私まだ風邪が治ってないから、しばらく会いに行けないわ。うつしちゃうといけないから」
「バカな子だね。おじいちゃんにはたくさんの人が付き添ってくれてるから、私のことを心配しなくていいよ。早く自分の体を治しなさい」
病院で、おじいちゃんは壁際のスーツケースを見て尋ねた。
「あなたのスーツケースがここにあるけど、誰かに届けてもらう?」
鈴木之恵はまだ引っ越したことをおじいちゃんに話していなかった。もし誰かに届けてもらえば、このことがおじいちゃんに知られてしまう。今は彼を刺激したくなかった。