鈴木之恵は自分の住まいに戻って服を着替え、再び外出して郊外の霊園へ向かった。
加藤沢から口頭で鈴木美波の墓が修復されたと聞いただけで、自分の目で確認しないと気が済まなかった。
タクシーの中で、彼女は終始重い気持ちだった。秋山奈緒母娘が鈴木美波に対して行った狂気じみた行為について、自分なりの報復をしたとはいえ、母親に申し訳ない気持ちが残っていた。
心の底から、母親がこのような侮辱を受けたのは自分のせいだと感じていた。もし一人の男性のことがなければ、あの狂犬のような母娘を怒らせることもなかったはずだ。
車が霊園の外に停まると、彼女は運転手に少し待っていてくれるよう頼んだ。後で出てきたときにタクシーが捕まらないかもしれないからだ。
彼女が入口に向かって歩き始めると、警備室から制服を着た人が出てきて挨拶をした。この数日間、鈴木之恵はよく来ていたので、警備員の目には顔なじみとなっていた。
「鈴木さん、お供させていただきます。」
鈴木之恵は少し驚き、丁寧に断った。
「ご親切にありがとうございます。私一人で大丈夫です。」
警備員は困った表情を見せた。鈴木美波の墓が荒らされた後、彼は鈴木という名の社長から高給で雇われた人物で、ボディーガードから警備員に降格されたのだった。給料が極めて良くなければ、この仕事は受けなかっただろう。
その社長から、この鈴木さんが来たら必ず安全を確保するようにと特に念を押されていた。
彼は形だけ承諾の返事をし、一定の距離を保ちながら後ろをついて行った。
鈴木之恵は鈴木美波の墓前に着くと、先日めちゃくちゃに破壊された墓が綺麗に整備され、墓前には新鮮な花が供えられているのを見た。彼女の母を訪れる謎の人物が来ていたことがわかった。
その人物と鈴木美波の関係は推測できなかったが、きっと母の生前の大切な人に違いない。その人物は一度も彼女の前に姿を現さず、どうやって感謝を伝えればいいのかも分からなかった。
彼女はバッグから紙とペンを取り出し、メモを書いて鈴木美波の墓前に置いた。
帰り道、八木修二から gossip ニュースの転送が LINE で届いた。他人の噂話には興味がなく、閉じようとした時、「藤田グループ社長藤田深志」という文字が目に入った。タイトルが長すぎて後ろは省略されていた。
詳細を開いて読んだ瞬間、彼女は凍りついた。