鈴木由典が紹介を終えると、小川淳に尋ねた。
「小川、最近お見合いをしたって聞いたけど、うまくいかなかったんだろう?」
小川淳は思わず笑って、
「前回は母が手配したもので、ただ形式的に参加しただけです。人生の大事なことは自分が満足できるものでなければならないですから、適当にはできません」
そう言って、何気なく鈴木之恵の方を見やり、心の中で密かに喜び、なぜか良いことが起こりそうな予感がした。
鈴木由典は眉を上げて言った。
「うまくいかなかったのは良かった。もし君が独身じゃなかったら、この件を任せる気にはなれなかったよ。今、妹が京都府の会社で内部管理に問題が出ていて、信頼できる人間を送り込む必要があるんだ。他の人は信用できない。行ってくれないか?」
小川淳は数秒間気まずそうにして、咳払いをした!
この大物が妹婿を選ぼうとしているのかと思ったが、そうではなかったようだ。
「鈴木社長、長期的に向こうに滞在することになるんですか?」
鈴木由典は咳払いをして、
「東京都の仕事もあなたなしでは回らないから、おそらく両方を行き来することになるだろう。どうだ?どうせ独身なんだから、どこで過ごしても同じだろう」
小川淳と鈴木由典は大学の同級生で、長年の付き合いがあり、このような厄介な仕事は鈴木由典が彼に任せるのが一番安心だった。
小川淳は呆れたように笑った。この野郎、真面目な話をしているときでも自分をディスることを忘れない。独身がどうした、彼の家の米を食べているわけじゃない。
「まずは妹さんに私を信用できるか聞いてみた方がいいんじゃないですか?」
鈴木之恵が話題を引き継いで、
「兄が信頼する人なら、私も当然信頼します。信用できないわけがありません。むしろ小川副社長がご不満なのではないかと」
小川淳は満足のいく答えを得て、ほとんど考えることなく、鈴木之恵の言葉が終わるや否や承諾した。
「分かりました、この件は引き受けましょう」
両方を行き来するなら行き来すればいい。あの野郎が言ったのは妹の会社のことだ。他人だったら本当に考え直すところだった。
鈴木由典はうんと言って、すぐに秘書に最も早い便の航空券を予約し、二人を空港まで送るよう指示した。
小川淳は苦笑いして、信じられないという様子で尋ねた。