第274章 キモい

オフィスが静まり返り、全員が息を殺して結果を待っていた。

「藤田社長、出ました。場所は東京都の臨海新区です。」

藤田深志は再び臨海新区という言葉を耳にし、先日中村慎から得た答えと同じだった。臨海新区はあまりにも広く、人を探すのは容易なことではない。

「もっと詳しい情報はないのか?」

「はい、すぐにお携帯に送ります。」

藤田深志は携帯を手に取り、詳細な住所を見た時、眉間にしわを寄せた。

「臨海新区、順平通り、翠湖別荘」

彼は前回弘美を送った場所が翠湖別荘だったことをはっきりと覚えていた。それは鈴木由典の家だった。

なるほど、鈴木由典か!

藤田深志は鈴木由典とビジネスでも私生活でもほとんど接点がなかったことを思い出した。

唯一の接触は4年前、鈴木由典が突然彼のヨットに現れ、意味不明な話をしたときだった。最近東京都で物件を探していて行き詰まっていたことを考えると、すべてが腑に落ちた。