一方、藤田深志は鈴木之恵から送られてきた音声メッセージを何度も再生していた。どう聞いても男の声が彼の妻と話をしており、彼の妻を「妹」と呼び、京都府のことも話題に出していた。
藤田深志は心の中で漠然とした不安を感じていた。彼女の周りに陸田直木以外の男が現れ、二人は一緒に行動しているようだった。木村悦子の言葉の端々から、ある考えが浮かんできた。もしかして之恵は京都府に戻ったのだろうか?
彼はそう考えるとすぐに柏木正を呼び入れた。
「奥様の秘書の電話番号を持っているだろう?」
柏木正は社長が東京都に戻る準備をしているのだと思った。彼も早く戻りたがっていた。結局、妻を一人でホテルに置いてきたので、心配だったのだ。
「藤田社長、はい、持っています!奥様のことが心配でしたら、明日にでも戻りましょう。あの美しいお顔の奥様ですから、好きになる人も多いはずです。油断はできませんよ!」