「私は行かないわ。先に薬を飲んで」
藤田深志は必死に目を開け、鈴木之恵は直接薬を彼の口元に持っていき、ようやく解熱剤を飲ませることができた。
鈴木之恵は水を持ってきて、うがいをさせようとしたが、数秒のうちに彼はまた眠りに落ちた。しかし、彼の手は依然として彼女をしっかりと掴んでいた。彼女が彼の寝ている間に逃げてしまうのを恐れているかのように。
彼は今、発熱だけでなく、全身が痒く、胃も灼けるように痛んでいた。朦朧とした意識の中でも、彼女が去ってしまうことを心配していた。
鈴木之恵は深いため息をつき、そっとベッドの端に座った。
およそ30分ほど経って、柏木正と古田先生が薬を持って戻ってきた。柏木正はドアをノックした。
鈴木之恵は目配せをし、二人は足音を忍ばせて部屋に入った。