鈴木之恵が藤田深志と結婚して半年以上経ち、同じ屋根の下で暮らしているものの、二人の関係は他人よりほんの少し親しい程度だった。
鈴木之恵は毎日彼が自分の目の前を行き来するのを見ながら、話しかけたいと思っても共通の話題が見つからなかった。彼はいつも忙しく、毎日遅くまで仕事をし、家での食事中でも仕事の電話を受けることが多かった。
結婚してこれほど経つのに、二人は別々の部屋で寝ていた。
この日、鈴木之恵はお風呂上がりに大きなベッドで退屈そうにスマホをいじっていて、今日が七夕だと気づいた。
SNSには花や指輪、映画のチケットの投稿が溢れていて、見ているだけで恋人たちの幸せそうな様子に圧倒された。
鈴木之恵は思わず家にいる男性のことを考えた。彼女は初めてこんなに真剣に男性を好きになり、彼との接点を増やしたいと願っていた。しかし、その人は冷たい性格で、近寄りがたい男神のような雰囲気を醸し出していて、彼女は彼の前では少し臆病になってしまう。
この特別な日に、他人の愛の表現を見ていると、心が寂しくなってしまう。
鈴木之恵はベッドの上で何度も寝返りを打ち、眠れない状態が続いていた。いつかは彼を落とせると自分に言い聞かせていると、下階から車のエンジン音が聞こえてきた。
鈴木之恵は彼が帰ってきたことを知り、耳を澄まして下階の様子を注意深く聞いていた。
彼がドアを開けて小柳さんと何か話をし、二分もしないうちに小柳さんが階段を上がってきてドアをノックした。
「奥様、お休みですか?社長がお渡しするものがございます。」
鈴木之恵は本来この記念日に期待などしていなかった。二人の普段の冷たい付き合い方からすれば、この日も普通の日と変わりはないはずだった。
それに、彼は記念日にプレゼントを贈るようなロマンチックな男性には見えなかった。
小柳さんの言葉を聞いて、鈴木之恵は心が躍り、急いで布団から出てドアを開けた。小柳さんは手に精巧な贈り物の箱を持っていた。
「奥様、社長からのプレゼントです。」
鈴木之恵は箱を受け取るとすぐに開けた。中には精巧なダイヤモンドのブレスレットが入っていた。
彼女がブレスレットを取り出そうとした時、ちょうど藤田深志が下階から上がってきてドア口に立ち、こちらを見ていた。
鈴木之恵は目を輝かせながら尋ねた。
「とても高価なものですか?」