鈴木之恵が藤田深志と結婚して半年以上経ち、同じ屋根の下で暮らしているものの、二人の関係は他人よりほんの少し親しい程度だった。
鈴木之恵は毎日彼が自分の目の前を行き来するのを見ながら、話しかけたいと思っても共通の話題が見つからなかった。彼はいつも忙しく、毎日遅くまで仕事をし、家での食事中でも仕事の電話を受けることが多かった。
結婚してこれほど経つのに、二人は別々の部屋で寝ていた。
この日、鈴木之恵はお風呂上がりに大きなベッドで退屈そうにスマホをいじっていて、今日が七夕だと気づいた。
SNSには花や指輪、映画のチケットの投稿が溢れていて、見ているだけで恋人たちの幸せそうな様子に圧倒された。
鈴木之恵は思わず家にいる男性のことを考えた。彼女は初めてこんなに真剣に男性を好きになり、彼との接点を増やしたいと願っていた。しかし、その人は冷たい性格で、近寄りがたい男神のような雰囲気を醸し出していて、彼女は彼の前では少し臆病になってしまう。