鈴木之恵は秋山奈緒がこんなに早く動くとは思っていなかった。
小川社長に電話をかけると、長い間呼び出し音が鳴り続けた後、ようやく相手が出た。
怠惰な声が耳に入ってきた。
「之恵、こんな早くに電話をくれるなんて、ジョギングに誘うつもり?」
「小川社長、申し訳ありません。この時間には起きているかと思いまして」
鈴木之恵は、小川淳が秋山との取引先とゴルフの約束をしていたことをはっきりと覚えていた。このようなビジネス的な私的な集まりを、彼は重視するだろうと思っていた。
少なくとも起きて身支度を整え、正装するはずだと。
小川は息を含んで「うん」と返事をした。
「大丈夫、ちょうど起きるところだった」
「小川社長、後でゴルフに一緒に行かせてください」
電話の向こうで数秒の沈黙があり、小川淳は完全に目が覚めたようで、声が澄んできた。