「藤田社長、南部の土地を入札しますか?」
藤田深志はほとんど考えることなく、
「もちろんだ。なぜしない?」
鈴木由典が目をつけた土地だ。彼は何が何でもその土地を手に入れなければならない。用途は後で考えればいい。とにかく、妻子を捨てたクズ男に嫌がらせをしてやる。藤田グループに無断で面倒を起こしに来るなんて、誰が許すというのか?
電話を切った。
藤田深志が1階に降りると、受付から聞き覚えのある声が聞こえてきた。振り向くと、やはり彼女だった。
鈴木之恵は、彼女より年上に見える男性と会計を争っていた。もみ合いの末、受付の女の子は男性のカードを受け取った。
藤田深志は足を止め、遠くからその男を観察した。
男は男を知るというのは本当だ。
その男はヘアジェルで髪を整え、正装し、額は光っていて、見た目は立派だが明らかに下心があるように見えた。